言語切り替え
ドロワーメニューを開く
  1. トップページ
  2. /
  3. ニュース
  4. /
  5. 弊社が開発に参画しているマルチレベル生理機能モデリングプラットフォームinsilicoIDE及びPhysioDesignerが、『2012年度計測自動制御学会学会賞(技術賞)』を受賞致しました。

弊社が開発に参画しているマルチレベル生理機能モデリングプラットフォームinsilicoIDE及びPhysioDesignerが、『2012年度計測自動制御学会学会賞(技術賞)』を受賞致しました。

InsilicoIDE及びPhysioDesignerが、2012年度計測自動制御学会学会賞(技術賞)を受賞し、秋田大学にて開催された『SICEAnnualconference2012』において、学会賞の授賞式(2012年8月22日)が執り行われました。
今回の『2012年度計測自動制御学会学会賞(技術賞)』は2010年に野村泰伸教授(大阪大学)と浅井義之先生(沖縄科学技術大学院大学)の共著として執筆された論文『浅井義之、野村泰伸(2010)”Physiome.jpにおける統合生命化学推進のためのプラットフォーム開発” 計測と制御,49pp.525-529.』 において発表された内容に基づいて審査されたものです。

InsilicoIDE及びPhysioDesignerは多階層生体システムのモデリング及びシミュレーションをサポートし、総合的生体科学分野における研究を推進することを目的としたアプリケーションプラットフォームです。弊社は、2007年から現在に至るまで、沖縄科学技術大学院大学様、大阪大学様からご依頼を受けて、そのプログラム開発に寄与しています。
開発当初、アプリケーション名はinsilicoIDEでしたが、そのver.1.4.4のリリース後、プロジェクトの枠組みの変更に伴ってアプリケーション名がPhysioDesignerに変更され、同時に大きなリエンジニアリングが施されてバージョンアップしました。(以降、本稿ではPhysioDesignerと呼びます。)

我々人も含めた生体の機能は、遺伝子レベルのミクロな世界のダイナミクスから、薬などの化合物とタンパク質の相互作用のレベル、新陳代謝なども関係する細胞レベル、心臓の拍動や呼吸など我々の生活の中でも認識できる臓器レベルなど、さまざまなレベルにおける非常に複雑な生物的・化学的・物理的な現象の総体として実現されています。
最新の生命科学は、生体機能を構成する個々の要素の理解の上に立脚して、生体機能を個々の要素の相互作用を含めた総括的システムとして理解することを目指しています。これを実現するためには、個々の要素について得られている知見に基づいて、生理学的に忠実な数理モデルを構築し、これらを組み上げて全体をモデル化することが、おそらく唯一の手段であると考えられています。

PhysioDesignerは、そのような統合的生命科学分野の中で、生理機能の階層性を明示的に表現しながら、生体システムの数理モデルを組み上げていくプロセスをサポートするためのアプリケーションプラットフォームです。
PhysioDesignerのグラフィカルなインターフェイスは、ユーザーが階層的生理機能の数理モデルを構築する際に必要となる様々なプロセスを省略し、簡便にモデル構築できるようにデザインされています。PhysioDesigner上で開発されたモデルは、記述言語PHMLを用いて保存されます。PHMLはXML形式の記述言語で、モデル共有が容易になるように設計されています。そして、PHMLは細胞内レベルから腕の運動や循環など個体レベルまで、さまざまなレベルにおける生理現象を汎用的に記述できるようにデザインされています。
PhysioDesigner上では、機能単位は「モジュール」として表現されています。複数のモジュールの集合を上位概念の1モジュールとして扱うことで機能構造の階層性を明示的にモデル化します。例えば、図2のように、脳全体あるいは領域を1つの親モジュールと定義し、神経細胞を子モジュール、さらに、神経シナプス部の細部の機能をさらに下位の子モジュールとして階層的に定義できます。
PhysioDesigerを用いることで、一から簡単に数理モデルを作成できるだけではなく、physiome.jpにおいて公開されているモデルデータベースからモデルをダウンロードし、すでに作成されているモデルを現在編集中のモデルの一部として組み込むことも可能です。構築されたモデルのシミュレーションは、シミュレータFlintにモデルを渡すことで容易に実行できます(図1)。

このような分野におけるモデリングでは、生理機能と生理構造を同時に扱う必要があります。PhysioDesignerでは、医用画像や3Dメッシュポリゴンモデルなどを読み込み、モデルに組み込むためのテスト的な機能をすでに実装しています。現在、弊社も沖縄科学技術大学院大学様、大阪大学様と更なる開発を進めているところです。
さらに、細胞内現象のモデル化に特に優れたSBML言語で記述された細胞内生化学反応モデルをPhysioDesigner上にインポートし、組み込むことができます。これにより、詳細な細胞内レベルモデルを含む、細胞ネットワーク、組織、個体レベルといった階層的モデルを構築することができ、図3のように薬を投与した際の心臓に与える薬の効果、あるいは逆に毒性などのシミュレーションを実行できるようになります。

例えば、不整脈に対する薬物の影響を投薬する前にシミュレーションすることで、投薬リスクの低減や薬の選定に役に立ちます。この実現に向けて、沖縄科学技術大学院大学様、大阪大学様が現在進めておられるプロジェクトでは、循環系における薬物動態、心筋細胞への薬理作用、心臓の拍動への影響などを含むモデルをPhysioDesigner上で構築することを試みられています。
また、将来的にはパーキンソン病など神経疾患を対象とした予測医学の基盤システムの構築にむけて、PhysioDesignerを用いて、大脳基底核周辺の神経回路ならびに、神経細胞への薬理作用を組み込んだモデルの構築も始まっています。
以上のように、生理機能の多階層モデリングをサポートすることにより、PhysioDesignerは統合的生命科学の発展に貢献しています。

参考図

図1
Image Viewer

 

図2
Morphology Editor

 

図3
Morphology Editor

関連リンク

1.計測自動制御学会学
2.SICE Annual conference 2012
3.PhysioDesigner
4.insilicoIDE
5.Physiome.jp

ページトップへ戻る
× メニューを閉じる